ヴァイオリンのコレクター
公開日:
:
ヴァイオリンの小話
史上一番のヴァイオリンコレクターは、ニコロ・パガニーニです。
1782年にイタリア・ジェノバに生まれ、1840年にフランス・ニースで没しています。
パガニーニは「24のカプリス(奇想曲)」やヴァイオリン協奏曲などが有名です。また、ヴァイオリン演奏の伝説や奇行もたくさんあります。(ギターの名人でもありました。)
パガニーニは、自分のヴァイオリン技術を盗まれないようにするため、楽譜をきちんと書かなかったり、共演するオーケストラの奏者に楽譜を直前まで配らず演奏後直ちに楽譜を回収していたようです。
練習方法を盗み聞きするため、パガニーニの泊まっているホテルの隣の部屋で壁に耳をあてていたライバルのヴァイオリニストは「パガニーニのヴァイオリンの練習音量があまりにも小さく聞き取れなかった」そうです。
パガニーニにはヴァイオリニストのどの流儀にも属していなく、直系の愛弟子もいません。
当時の聴衆は、遠くからもパガニーニの演奏を聴きに来ました。(未曾有の興行で、現在のIT長者も真っ青なほどのお金を手にしていたと言われています!)
パガニーニが活躍した19世紀前半は、クレモナの銘器にはプレミアムが付き始めていました。1832年、パガニーニはロンドンで一挺のストラディバリウスのヴィオラ1731年製を購入しました。このヴィオラの、輝かしく彫りの深い音色に感銘を受けたパガニーニは、親交のあった作曲家ベルリオーズにヴィオラ協奏曲を委嘱しました。こうして書かれたのが、ヴィオラの独奏を伴う「イタリアのハロルド」です。
パガニーニは、せっせと銘器を買い集めてカルテット演奏用に4挺を確保しました。
パガニーニは亡くなる直前には、11挺のストラディバリウスのコレクターになっていました!
ストラディバリウスと同じく人気の銘器「ガルネリ・デル・ジェス」。デル・ジェスの中でも歴史的逸品「キャノン(カノーネ)」は、パガニーニがその声価を高めたと言われています。
カルテット用のストラディバリウス4挺はパガニーニの死後離散してしまいますが、エミール・ハーマンというディーラーの懸命な努力で買い戻され、アメリカワシントンDCのコーコラン美術館に寄贈されました。
通称「パガニーニ・カルテット」と呼ばれる4挺のストラディバリウスは、1964〜1994年までクリーヴランド・カルテットに貸与されました。
「パガニーニ・カルテット」は1994年に日本音楽財団が1500万ドルで購入し、2007年現在は東京カルテットに貸与されています。
関連記事
-
-
ヴァイオリンのポジション移動
ヴァイオリンを始めて ファーストポジションが安定してきた頃に 始める「ポジション移動」: 左手指(の
-
-
ヴァイオリン練習を手軽に
ヴァイオリン練習は ① ケースを開ける ② 肩当てを付ける という準備があります
-
-
教則本で有名なヴァイオリニスト 1
「セヴシック」 当教室の生徒さんでも取り組んでいる方が少なくない「セヴシック」。ヴァイ
-
-
バッハの「無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ」
先日レッスンのSさんが、とても良い「バッハ作曲 無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ」の資料を持
-
-
日本のヴァイオリンの教本
日本でよく使われているヴァイオリンの教本は、3つあります。 「鈴木慎一バイオリン指導曲集」全
-
-
作曲家を夢中にさせたヴァイオリニスト
1844年スペインのバンブローナ出身のパブロ・サラサーテ。 サラサーテは19世紀半ばから後半
-
-
ヴァイオリンのポジション移動
「ヴァイオリンの指板は見る通り、およそ30cmくらいの長さしかありません。 しかし、ヴァイオリンが
-
-
「ヴァイオリン」の名称は
「ヴァイオリン音楽」が最初に発展したのはイタリアです。 イタリア語でこの楽器のことを「ヴィオ
- PREV
- ヴィヴァルディのヴァイオリンコンチェルト
- NEXT
- ヴァイオリンアンサンブルも